【公務員も要注意】NISA貧乏にならないための鉄則|元公務員FPが陥りがちな罠を徹底解説

最近、「NISA貧乏」という言葉を耳にする機会が増えました。将来のためにと始めたはずのNISAが、かえって現在の生活を圧迫してしまう状況は誰にとっても避けたいものです。

特に、収入が安定している公務員の方は「自分は大丈夫」と思いがちですが、実はその安定性ゆえに陥りやすいNISA貧乏の罠が存在します。

本記事では、なぜ公務員がNISA貧乏に陥りやすいのか、その具体的なパターンと、元公務員FPだからこそ伝えられる実践的な対策を徹底解説します。

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尾方優作(元公務員のファイナンシャルプランナー)

2017年に新卒で千葉県内の市役所職員に入庁し、保育園部署にて公立保育園の施設管理業務を約5年、財政部署にて公共事業の資金調達業務・消防局の予算決算事務を1年余り担当したのち2023年6月に退職。
現在は在職時に取得したファイナンシャル・プランニング(FP)技能士資格を活用した個別相談業務や講師業務等を行うほか、事務代行サービスの運営や中小企業への財務サポート業務を展開。1994年6月生まれ。
(CFP®認定者)

目次

話題の「NISA貧乏」とは?国会でも議論されたその実態

そもそもNISA貧乏とは、新NISAの非課税メリットを最大限に活用しようとするあまり、生活費や交際費、趣味に使うお金まで切り詰めて投資に回した結果、現在の生活が困窮してしまう状態を指す造語です。

この言葉はSNSを中心に広がり、国会などでも大きく取り上げられました。直近では片山さつき金融担当大臣が「積み立て自体の目的化は意図していない」と答弁する事態となり、社会的な関心事であることが浮き彫りになりました 。

SNS上では、「NISA貧乏というより、税金や社会保険料が圧迫してそもそも手取りが少ない点が問題の本質だ」といった声も多く見られます。これは、将来への不安から投資せざるを得ない状況にありながら、重い税負担によって投資に回せる資金が限られている、という若者世代の切実な叫びとも言えるでしょう。

将来への備えはもちろん重要ですが、それは「今」を犠牲にしてまで行うべきものではありません。特に、旅行や学び、人との交流といった若い頃の経験は、将来のお金には代えがたい価値を持つ自己投資でもあります。NISAはあくまで豊かな人生を送るための「手段」であり、NISA自体が「目的」になってはいけないのです。

公務員がNISA貧乏に陥りやすい理由

先ほど、NISA貧乏とは税金や社会保険料が圧迫するという点が背景にあるというSNSの声をご紹介しました。

一見すると「収入が不安定な人がNISA貧乏になるのでは」と思うかもしれません。しかし収入が安定している公務員だからこそ、NISA貧乏に陥りやすいと考えています。

理由①:安定収入と年功序列への過信

公務員の最大の強みは、その雇用の安定性と、年功序列による着実な昇給が見込める点です。しかし、これがNISA貧乏の入り口になることがあります。

「来年には給料が上がるから、今年は多少無理してでも積立額を増やそう」、「数年後には役職も上がって手当も増えるはず」といった楽観的な見通しを立て、現在のキャッシュフローを無視した無謀な積立計画を立ててしまうのです。

また、手厚い退職金制度への期待から、いざという時のための生活防衛資金の確保を後回しにして、余剰資金のほとんどを投資に回してしまうケースも少なくありません(※生活防衛資金については後述しています。)

理由②:同僚との比較と横並び意識

閉鎖的な職場環境も、NISA貧乏を助長する一因です。職場で同僚が「新NISA始めたんだ」「満額やってるよ」といった会話を始めると、「自分も乗り遅れてはいけない」という焦りが生まれます。NISAではないですが、実際私も公務員時代に共済貯金(=公務員などが加入できる貯蓄制度)の積立額について同期と会話していたこともあり、周りがどのくらい貯蓄や投資に回しているかは興味関心が強いトピックです

特に真面目な方ほど、同僚と同じようにできない自分を責めたり、自分の家計状況を冷静に分析することなく「とりあえず同僚と同じ月5万円で…」と、横並びで金額を決めてしまいがちです。しかし、家庭環境や住宅ローンの有無、子どもの人数などが違えば、適正な投資額は人それぞれ全く異なります。自分だけの基準を持たず闇雲に投資に充てることが、無理な投資計画へとつながるのです。

理由③:リスクへの不慣れ

公務員は民間企業に比べて解雇や減給のリスクに晒される機会が少ない職業です。これが投資の世界におけるリスクへの感覚を鈍らせる可能性があります。

前提として、NISAで投資する投資信託や株式は元本が保証されていません。市場の動向によっては一時的に資産が大きく目減りすることもあります。頭では理解していても、安定した環境に身を置く公務員は、資産が減ることへの耐性が低い傾向にあります。

結果として、相場が少し下落しただけで損失を確定させてしまったり、逆に「どうせまた戻るだろう」と過度に楽観視してリスク管理を怠ったりと、適切な判断ができなくなる危険性があるのです。

【実例】元公務員FPが見た!公務員のNISA貧乏3つの典型パターン

私がFPとして相談を受けた、公務員がNISA貧乏に陥ってしまった3つの典型的なパターンをご紹介します。

実際の相談事例を基に内容や数値を変えた形での紹介になりますが、記事をお読みいただいている方の中には、決して他人事ではないと感じる方もいるかもしれません。

パターン①:独身若手職員Aさん(25歳・行政職)のケース

Aさんは、手取り月収18万円の独身若手職員です。将来への意識が高く、NISAに月5万円、さらにスキルアップのためのオンライン講座や書籍代に月3万円を投資しています。しかし、残りの10万円で家賃や水道光熱費などを支払うと、手元に残るのはわずか2.5万円。食費を極限まで切り詰め、職場の飲み会や友人からの誘いも断る日々が続き、人間関係まで希薄になってしまいました。

Aさんの場合、将来のための投資が最も大切な「今」を蝕んでしまっている典型例です。

パターン②:子育て世代Bさん(35歳・教員)のケース

Bさんは、小学生の子どもが2人いる教員です。世帯年収は夫婦合わせて900万円と決して低くありません。しかし、月12万円の住宅ローンに加え、子どもの塾や習い事に月5万円がかかります。

周囲の教育熱心な家庭に影響され、「夫婦でNISA満額(月10万円)はやらないと」と一念発起しましたが、結果的に毎月の家計は赤字。ボーナスで赤字を補填する自転車操業に陥り、精神的に追い詰められていました。

パターン③:ベテラン職員Cさん(50歳・役職者)のケース

Cさんは、定年まで約10年のベテラン職員。退職金が2,000万円以上見込めることから、「老後資金は安泰だ」と考え、積極的に資産運用を行っていました。しかし、NISAの非課税枠を使い切るだけでは飽き足らず、「退職金で返せばいい」とカードローンをしてまで投資に回してしまったのです。

Cさんは、近年の退職金制度改定で自身の受給額が想定より減る可能性や、退職金にかかる税金について全く考慮しておらず、退職後に破綻しかねない危険な状態でした。

このように年代や家族構成などはバラバラですが、共通して言えるのがNISAを正しく活用できていないことによって家計を圧迫せているという状況です。繰り返しになりますが、NISAは資産形成の手段の1つに過ぎません。周囲の人の状況などに流されないよう、NISAに取り組む目的などを明確にしておきましょう。

NISA貧乏にならない!公務員のための鉄則

それではどうすればNISA貧乏を避け、公務員の強みを活かした賢い資産形成ができるのでしょうか。本記事では、元公務員FPの立場から、ぜひ守ってほしい3つの鉄則をお伝えします。

鉄則①:生活防衛資金を最優先で確保する

投資を始める前に必ず確保しなければならないのが生活防衛資金です。これは、病気やケガ、家族の介護などで急に働けなくなった場合でも、当面の生活に困らないためのお金です。

一般的には手取り月収の3〜6ヶ月分と言われますが、もちろん十分な資金的余裕があればその分心の余裕に繋がります。

しかしいきなり6ヶ月分や1年分などはハードルが高いという方は、まずは3ヶ月分の生活防衛資金の確保を目標に取り組んでみてください。

鉄則②:手取りの一定割合を上限に積立額を決める

手取り収入のうちの一定割合までを積立額(投資額)にするというルールを定めることも効果があります。無理のない積立額の目安として、「手取り月収の20%」というルールを設けることをお勧めします。例えば手取りが25万円なら、投資に回すのは最大でも5万円です。

重要なのは、将来昇給したとしても、この20%という割合を維持することです。昇給分をすべて投資に回すのではなく、生活水準の向上や自己投資にもバランス良く配分しましょう。

なお、公務員にはボーナスが支給されますが、ボーナスに関してはNISAなどに充てても差し支えありませんが、旅行や趣味など、心の満足度を高めるために使ってもいいと思います。投資は義務ではなく、あくまで人生を豊かにする「選択肢」の一つなのです。

NISA貧乏を招く要因として過度な投資が背景にあるわけですから、いっそボーナスは生活費と趣味嗜好に充てるという考えもOKだと私は考えています。

鉄則③:出口戦略(いつ・何のために・いくら使うか)を意識する

「とりあえずNISAを満額」と始めるのは危険です。資金を「いつ」、「何のために」、「いくら」使うのか、という出口戦略を明確にしましょう。

わかりやすい例として、「20年後の子どもの大学入学資金」、「30年後の自分の老後資金」、「15年後の住宅リフォーム費用」などです。出口戦略が明確であれば取るべきリスクや選ぶべき商品が変わってきます。

まとめ:NISAは「目的」ではなく「手段」。公務員こそ冷静な家計管理を

本記事では、公務員がNISA貧乏に陥りやすい理由と、それを避けるための具体的な鉄則を解説しました。

NISAは、将来を豊かにするための素晴らしい手段です。しかし、使い方を間違えれば、最も大切な「今」を壊しかねない諸刃の剣にもなります。公務員という安定した立場にいるからこそ、周囲の雰囲気に流されず、ご自身の家計とライフプランに真摯に向き合う冷静さが求められます

「自分の場合は、具体的にいくら投資するのが適切なんだろう?」「iDeCoとNISAの最適なバランスを知りたい」など、個別具体的なプランについてお悩みの際は、ぜひ一度、FPへの相談をご検討ください。元公務員としての経験も踏まえ、あなたに最適な資産形成プランを一緒に考えさせていただきます。

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