公務員も知っておきたい高額療養費制度の見直し|2026年8月から自己負担限度額引き上げ

もし大きな病気やケガをしたら、医療費が高額になるといった不安を抱えたことはありませんか?

日本には高額療養費制度があり、医療費が一定額を超えた場合にその超過分が払い戻される仕組みがあります。しかし、この制度は2026年8月から段階的に見直され、自己負担の上限額が引き上げられることが決定しました。

この記事では、高額療養費制度の基本から、今回の改正内容、そして公務員の方が今からできる備えまでを、元公務員のファイナンシャルプランナーがわかりやすく解説します。

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尾方優作(元公務員のファイナンシャルプランナー)

2017年に新卒で千葉県内の市役所職員に入庁し、保育園部署にて公立保育園の施設管理業務を約5年、財政部署にて公共事業の資金調達業務・消防局の予算決算事務を1年余り担当したのち2023年6月に退職。
現在は在職時に取得したファイナンシャル・プランニング(FP)技能士資格を活用した個別相談業務や講師業務等を行うほか、事務代行サービスの運営や中小企業への財務サポート業務を展開。1994年6月生まれ。
(CFP®認定者)

目次

高額療養費制度とは

高額療養費制度による払い戻しのイメージ

そもそも高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限(自己負担限度額)を超えた場合に、超過分が後から払い戻される制度です。上限額は収入によって異なり、高所得者ほど負担が大きく、低所得者ほど負担が少ない仕組みになっています。

現行(2026年7月まで)の自己負担限度額(70歳未満)は以下のとおりです。

所得区分自己負担限度額(月額)多数回該当(4回目以降)
区分ア(標準報酬月額83万円以上)252,600円+(総医療費-842,000円)×1%140,100円
区分イ(標準報酬月額53万〜79万円)167,400円+(総医療費-558,000円)×1%93,000円
区分ウ(標準報酬月額28万〜50万円)80,100円+(総医療費-267,000円)×1%44,400円
区分エ(標準報酬月額26万円以下)57,600円44,400円
区分オ(低所得者:住民税非課税)35,400円24,600円
(参考:全国健康保険協会「高額療養費 自己負担限度額(70歳未満の方の区分)」

例えば、標準報酬月額が28万〜50万円(区分ウ)の方が、1か月の医療費が100万円(3割負担で30万円)かかった場合、自己負担限度額は87,430円になります。つまり、30万円との差額である21万2,570円が高額療養費制度で払い戻しされます。

この制度のおかげで、医療費が高すぎて払えないという事態をある程度防ぐことができています。

ちなみに表にある多数回該当とは、同一年度内に3回以上上限に達した場合、4回目から限度額が記載されている金額まで下がる仕組みを指します。

また、マイナ保険証を利用することで最初から窓口での支払いを自己負担限度額内に抑えられる方法もあります。事前の手続きが不要になるため、活用を検討してみてください。

これまでの自己負担限度額引き上げの背景

政府は2024年12月、高額療養費の自己負担限度額を2025年8月から段階的に引き上げる方針を決定しました。しかし、がん患者や難病患者の団体などから「長期療養者の生活を直撃する」として強い反対の声が上がりました。

与党内部からも異論が相次ぐ中、2025年3月、政府は2025年8月からの引き上げを全面的に見送る方針を示しました。これにより、引き上げは事実上、全面凍結された形となりました。

凍結後の再議論と新たな引き上げ

自己負担限度額引き上げ凍結後、厚生労働省の社会保障審議会に「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」が設置され、2025年5月〜12月にかけて患者代表も交えた審議が複数回行われました。

そして、2025年12月25日、厚生労働省から新たな見直し案が決定されました。主な変更点は以下のとおりです。

  • 2026年8月から第1段階の引き上げを実施
  • 2027年8月から第2段階の引き上げ(所得区分の細分化)を実施
  • 所得区分を現行の5区分から、住民税非課税を除く各区分を細分化(より所得に応じたきめ細かい設計へ)
  • 引き上げ幅は所得区分により4〜38%(高所得者ほど引き上げ幅が大きい)
  • 多数回該当の金額は据え置き
  • 年間上限額を新設し、月単位の限度額に届かない長期療養者の負担にも配慮

したがって、直近では2026年8月から実際に引き上げが始まる見込みです。

公務員にとっての影響は?

公務員が加入している共済組合(地方公務員なら地方公務員共済組合、国家公務員なら国家公務員共済組合)も、協会けんぽなどと同様に高額療養費制度の対象です。そのため、今回の見直しの影響は公務員にも及びます

特に以下のような状況にある公務員の方は、影響を意識しておく必要があります。

  • がん・難病など長期的な治療が続いている方
  • 家族が入院・手術などで高額な医療費がかかる可能性がある方
  • 現在、多数回該当の適用を受けている方(据え置きのため直接影響は小さいが、通常時の上限が上がることで条件から外れるケースも)

今からできる備え

今回の引き上げは確定しており、今後さらに見直しが続く可能性もあります。公務員の方も、医療費への備えを意識しておくことが重要です。

  • 民間の医療保険の見直し:入院や手術に備えた保障内容を確認する
  • 貯蓄の確保:高額療養費制度で払い戻しを受けるまでには時間がかかる。一時的な出費に備えた手元資金を持っておく
  • マイナ保険証の活用:あらかじめ限度額適用認定証の代わりとして使えるため、窓口での立替負担を抑えられる

高額療養費は前述のとおりある程度医療費を抑制することができます。しかし、高額療養費の対象はあくまで保険適用内の診療に限られます。

そのため、保険適用外診療に備えるためには民間の医療保険への加入や医療費のための資金を確保していくことが必要になります。

まとめ

高額療養費制度は、高額な医療費から私たちの生活を守る重要なセーフティネットです。2025年春に一度は凍結されたものの、その後の再議論を経て、2026年8月から段階的な引き上げが行われることが決定しています。

特に長期的な治療が必要な方や、家族に医療費の心配がある方にとっては他人事ではありません。公務員の方も給与や共済組合の制度に守られているからこそ、制度の変化に敏感であってほしいと思います。

医療費の確保やその他公的制度について詳しく知りたい方はぜひ尾方FP事務所にご相談ください。

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